心にそっと灯る物語ー。
頑張りすぎて、心が疲れてしまう。
そんな瞬間に寄り添ってくれる本です。
この小説は、静かな優しさがゆっくりと心に灯りをともす、そんな物語です。
この本をおすすめしたい方
- 優しい物語を読みたい気分の方
- 人との距離感に悩んでいる方
- 忙しい毎日に疲れている方
あらすじ(ネタバレなし)
家政婦として働く私が派遣されたのは、80分しか記憶が持たない元数学博士の家。
記憶力を失った博士にとって、私は常に新しい家政婦。
博士との会話は、毎朝「君の靴のサイズは」からはじまります。
数学は、博士にとって世界と繋がる大切な言葉。
新しいことは覚えられないけれど、
それでも博士は数字を通して世界を理解し、
家政婦とその息子ルートに静かな優しさを向けるようになります。
3人が少しずつ心を通わせていく日常は、
特別なことが起こるわけではないのに、
深く、温かい余韻が残ります。
人を想う心と小さな優しさ。
とても静かで、美しい物語です。
心に残った言葉
- 「数字は嘘をつかない。だから美しいんだ」
- 「君はルートだよ。実に寛大な記号、ルートだ」
- 「ただ一人、ルートに褒めてもらえれば、僕はそれだけで満足なんだ」
感想(読書メモ)
文系の私にはむずかしく感じていた素数や完全数ですが、博士の口から語られる数字の話は、不思議と温かく、身近なものに思えてきます。
靴のサイズや誕生日。どれもただの記号ではなく、意味をまとった優しい数字でした。
博士の背広には、
古びたメモがいくつも留められています。
「明日すること」、「人の名前」、
「ぼくの記憶は80分しかもたない」。
毎朝目を覚まし、このメモを目にしたときの博士の心細さを思うと、胸がきゅっとします。
それでも博士は静かに現実を受け入れています。
博士にとって数字だけが、
変わらずそこにある確かなもの。
何度忘れても向き合える拠りどころでした。
毎日が初対面のはずなのに、
家政婦とその息子ルートに向ける博士の優しさはいつも変わらない。
三人が少しずつ思いやりを交わし、大切に思い合う姿が静かに積み重なっていきます。
人を想う気持ちには、記憶の長さは関係ない。
この物語は、そのことをそっと教えてくれました。
この本がくれるもの
- 疲れたとき、呼吸を整えてくれる
- 人との距離に悩んだときのヒントになる
- 優しさは、決して大きくなくていいと気付かせてくれる
まとめ
とにかく温かい物語です。
この作品に出会えた私は幸せでした。
この物語が、あなたの心を少しでも軽くしてくれますように。
ぜひ読んでみてください。

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